ピーカンBOYZ一号二号
前記事のアイストレッキングを12時間歩き続けて、クタクタになって一度町までもどり宿のベットにたおれこんだ。
翌日、起床は朝3時。
目的は南米一登攀が難しい(自称)といわれるフィッツロイの朝日を見るため。
お供はパイネでほぼ同じ時期にトレッキングをし、ペリートモレロの氷河を一緒に見に行った慎さん。
どうも二人が行動すると雲一つないピーカンになるという超晴れ男コンビということで、ピーカンBOYZが結成された。
昨日は本気を出さずに天気は良くなかったが、この日はピーカンBOYZの本気日ということで、みごと星が一面に輝いていた。
朝四時に寝ぼけ頭で宿を出発する。
いざ、トレッキング道に入ると体の重さに呆然とする。
荷物は食料と水だけだったが、年末から移動続きと前日の12時間トレッキングのお陰で身体に乳酸があふれ出していたみたいである。
まだ真っ暗の道を、ペンライト一本で一歩一歩重い足を前だす。
ただひたすら前へ前へと黙々とすすむ。
次第に空が白み始めて、朝日の時間が迫ってくる。
休憩もなしに前へ前へ。
そして、ライトなしで歩けるようになるころやっとフィッツロイを眺めるミラドールへと到着した。
待つこと三十分。
出ました、ご来光。
雲がほとんどない朝のくすんだ青空に大きな爪の様な形をした山が突き刺さっている。
その山を東から上った朝日がオレンジ色にフィッツロイを照らす。
ここまで歩いてきた疲れが一気に癒えた。
ものの三十分ぐらいで朝の小劇が終了し、フィッツロイはいつもの昼間の顔になった。
そこからさらに二、三時間歩いてフィッツロイ麓にある湖のところまで登る。
途中、パイネで痛めた左足をかばっていたのか、今度は右足が猛烈に痛み始めた。
湖までは岩場の崖のようなところを登らなければいけないので、足を引きずるように登っていった。
氷河に削られて独特の形をしたフィツロイ。
まさに壁である。
湖の手前から眺めていると、氷河の上を蟻の行列のような黒いてんが動いている。
良く目を凝らしてみると、それは十人ほどの登山隊のパーティーだった。
それは見る見るうちに上へ登っていく。
フィッツロイを登るには完全にクライミング技術を要する。
観光客のトレッキングはこの湖の手前までが限界で、頂上を目指すことはできない。
何故か身体がウズウズしてくる。
登ってみたい。
あんな壁の様な山を登って、その頂上から世界を見てみたい。
それは想像を絶するような景色だろう。
足の痛みは時間とともにさらに激しくなり、まともに歩くことができなくなった。
町までは大半が下り道で、さらに右足に負担がかかる。
バスの時間が夕方だったので、痛みに耐えてもう歩くというか、這いずるようになんとか町まで戻った。
二日連続で12時間トレッキングを行いもう身体はボロボロだった。
でも、心は不思議と活力に溢れていた。
フィッツロイに登る。
これは僕の大きな夢。